■対馬の秋の風物詩  アキマドボタル  Pyrocoelia rufa  【ホタル科】
アキマドボタルは日本では対馬だけに生息する大陸系のホタルです。 陸生のホタルで,ウスカワマイマイをはじめとするカタツムリなどの陸生の貝類を食べて育ちます。

生活の場所は,畑地や水田の周辺でクズなどの植物が繁茂した湿度の高いオープンランド的な環境を好みます。 イノシシやシカによる生息環境の悪化はあるものの,アキマドボタルの生息域は全島に広がっていて個体数も決して少なくありません。

多くのホタルが初夏から真夏にかけて出現するに対し,アキマドボタルは9月に入って涼しくなり始める頃から出現します。

アキマドボタルの特徴はその大きさと写真のような♀の形態です。 ♂の体長は18mm前後,♀はさらに大きく30mm近くにも達する個体もいます。 しかも♀は翅が退化していて飛ぶことができません。 ♂に比べて数も極端に少なく,草むらで光とフェロモンを放ちながら,じっと♂を待ち続けています。
 
2004.09.16 対馬市上県町 
2016.10.02 対馬市厳原町
前胸背前面に一対の透明部があり,複眼が透けているのが分かります。 この透明部が「窓」で,マドボタル(窓蛍)という名前の由来です。 中胸に一対の退化した黒い翅が付いています。 その前後が前胸と後胸で3節合わせて胸部(ピンクがかった部分)ということになります。
▲前胸背全体は黄橙色で中央部は紅色を帯びる  2004.09.16   ▲♀の体はウジ状  胸部には痕跡程度に退化した翅が認められる  2004.10.08
 
 ▲前胸背前方縁に透明部(窓)があり,複眼が覗いている  2012.10.02   ▲♀の複眼は♂よりかなり小さい  2004.10.08 
2016.10.06 2016.10.02

2016.10.04 対馬市厳原町
2016.10.04 対馬市厳原町 2016.10.04 対馬市厳原町

2016年秋,驚きの情報がもたらされました。 豆酘崎でアキマドボタルが飛んでいたというのです。 
早速確認のため現地へ…。 驚きました。日没とともにあちこちから多くの♂が光りながら飛び交い始めたのです。 特に,突端の海から崖沿いに光が次々に上がってくる様は背景の漁船の集魚灯と相まって幻想的な光景でした。
2016.10.02  対馬市厳原町豆酘崎
 
 ▲地面から飛び立とうとする♂  2012.10.02   ▲飛翔する♂  2012.10.04 
 
 ▲下草に降りた♂  2012.10.02    2012.10.02

  
    
   
アキマドボタルは卵から成虫になるまで2年を要します。
▲対馬産アキマドボタルの一生
 
▲産み落とされた卵  2004.10.08    ▲直径2mmほど 2004.10.08 
 
▲葉上で休む幼虫  来年成虫になる  2004.09.22    ▲地面を徘徊する幼虫  2014.09.25 
2016.10.05 対馬市厳原町
2016.10.05 対馬市厳原町 2016.10.05 対馬市厳原町
2014.09.25 2016.10.02



アキマドボタルは,次の指定を受けています。

阿須川のアキマドボタル生息地 県指定(S41.5.26)
アキマドボタル 市指定(H20.3.31)

県指定された当時,アキマドボタルは旧厳原市街地のどこでもごく普通に見ることができました。 あえて阿須川を指定する特別な理由はなかったと思われます。 まして,陸生のホタルなのですから阿須川は生息地ではありません。
指定のいきさつは不明ですが,そろそろ見直しの時期にきているのかもしれません。

市の種指定についても,現在の生息状況から考えてその根拠が弱いと言わざるを得ません。 種指定によって,採集禁止となりましたが昆虫関係者の間には訝る声があることを正直に述べておきます。

それはさておき,対馬の秋を告げる風物詩であるアキマドボタルが飛び交う,対馬がいつまでもそんな自然豊かな島であってほしいものです。



    ■資料画像
 
▲ススキの枯れ穂で休む♂ 2016.10.05 対馬市厳原町
▲岩陰の♀ 2016.10.01 対馬市厳原町
▲地表の朽ち木に見られた♀ 2016.10.02 対馬市厳原町
▲このように複数の♀が集まってみられるのは珍しい 2016.10.02 対馬市厳原町
▲交尾 2016.10.04 対馬市厳原町
▲徘徊する幼虫 2016.10.05 対馬市厳原町