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 ■深紅の前胸が美しい  ツシマコメツキモドキ  Tetraphala fryi  【コメツキモドキ科】
九大の「日本産昆虫目録データベース(MOKUROKU)」では,日本のコメツキモドキは26種類が記載されています。 「対馬の生物 (1976)」によると,対馬にはツシマコメツキモドキの他に,ケシコメツキモドキとクロヒメコメツキモドキが記録されていますが,その後の記録は分かりません。

最近,対馬のコメツキモドキについて記録の整理が行われ,次の5種が記載されています。
クロヒメコメツキモドキ・ツマグロヒメコメツキモドキ・ルイスコメツキモドキ・ケシコメツキモドキ・ツシマコメツキモドキ
「対馬・壱岐のコメツキモドキのチャックリスト」 Checklist of Lizard Beetles(Coleoptera,Erotylidae,Languriinae)of Island of Tsushima and Iki-no-shima,Japan (松尾・原2015 Elytra5巻1号)
 
今まで,この大陸系のツシマコメツキモドキとキムネヒメコメツキモドキ(未記録)・ツマグロヒメコメツキモドキ・ルイスコメツキモドキ・ケシコメツキモドキの5種類を確認しました。  
ツシマコメツキモドキは島内でもどこでもいる虫ではないようでまだ数か所でしか見たことがありません。寄主植物はワラビを確認しています。 幼虫はワラビの茎に潜行して生長するので幼虫の侵入している茎はこぶ状に膨らんでいます。
▲ワラビの茎上のツシマコメツキモドキ Tetraphale fryi (Fowler, 1886) 2013.05.31 対馬市豊玉町
 
▲ツシマコメツキモドキ 2013.05.31 対馬市豊玉町    ▲ツシマコメツキモドキ 2013.05.31 対馬市豊玉町
 
▲通常はこのように茎に下向きに制止していることが多い  2011.06.08 対馬市豊玉町       ▲移動目的の時以外は頭部を上に向けることはありません  2011.06.08     2012.06.10
 
   
   
 ■交尾
▲ワラビの茎上で交尾するツシマコメツキモドキ Tetraphale fryi (Fowler, 1886) 2021.06.01 対馬市豊玉町
▲ツシマコメツキモドキ 2021.05.22 対馬市美津島町 ▲♂♀の差異はほとんどありません  2013.05.31 対馬市豊玉町

▲ツシマコメツキモドキの交尾 Tetraphale fryi (Fowler, 1886) 2021.05.22 対馬市美津島町


 ■飼育記録(幼虫・蛹)
2015年9月13日,美津島町?知においてワラビの葉柄内を穿孔中の幼虫1頭を採集しました。
その幼虫を取り出し,直径30mmのプラケースで飼育しました。穿孔幼虫なので不安でしたが,餌としてワラビをすり下ろしたものを与えたところ,同年9月23日無事蛹化しました。その後,羽化日を見落としてしまいましたが,蛹期は20日前後でした。

生活史について
野外観察及び屋内での飼育の結果、生活史は次のように推察されます。
成虫は,5月中旬頃から主にワラビの葉上に姿を現し、7月中旬まで見られます。その間,成虫はワラビの葉上で交尾を行い,その葉柄に産卵します。孵化した幼虫はワラビの葉柄内を穿孔し,その中で生長しながら盛夏を過ごし,8月下旬?〜9月にかけて蛹化します。
およそ20日前後の蛹期後,新成虫となって羽化し寄主から脱出しきます。新成虫は脱出した後,越冬するものと考えられますが,越冬場所については今の段階では分かっていません。本種の冬から春にかけての生活史については今後更なる調査が必要です。
▲ツシマコメツキモドキの飼育 Tetraphale fryi (Fowler, 1886) 2021.09.13 対馬市美津島産
▲ツシマコメツキモドキの幼虫 Tetraphale fryi (Fowler, 1886) 2021.09.13 対馬市美津島産
▲ツシマコメツキモドキの蛹 Tetraphale fryi (Fowler, 1886) 2021.09.13 対馬市美津島産


 ■摂食
▲ワラビの茎をかじるツシマコメツキモドキ Tetraphale fryi (Fowler, 1886) 2021.05.27 対馬市豊玉町


 ■生息環境
▲ツシマコメツキモドキの生息環境 Tetraphale fryi (Fowler, 1886) 2021.05.19 対馬市美津島町


▲ツシマコメツキモドキ 2021.05.23 対馬市豊玉町産 ▲ツシマコメツキモドキ 2022.05.17 対馬市豊玉町産
     ルイスコメツキモドキも花から落ちてくることがあるのですが、この個体もエゴノキの花から得られました。吸蜜なのか、あるいは花粉・花弁などを食べているのでしょうか?
 
▲ツシマコメツキモドキの交尾 2023.06.02 対馬市豊玉町産    ▲ツシマコメツキモドキ 2018.06.06 対馬市厳原町産 






 ■資料画像
 ▲ツシマコメツキモドキの交尾 Tetraphale fryi (Fowler, 1886)  2012.06.10 対馬市豊玉町産
▲ツシマコメツキモドキ 2021.05.22 対馬市美津島町 ▲ツシマコメツキモドキ 2021.05.23 対馬市豊玉町
▲ツシマコメツキモドキ Tetraphale fryi (Fowler, 1886) 2021.05.19 対馬市美津島町
▲ツシマコメツキモドキ 2021.05.19 対馬市美津島町 ▲ツシマコメツキモドキ 2021.05.19 対馬市美津島町
▲ツシマコメツキモドキ Tetraphale fryi (Fowler, 1886) 2018.06.06 対馬市厳原町
▲ツシマコメツキモドキ 2016.05.08 対馬市豊玉町 ▲ツシマコメツキモドキ 2016.05.08 対馬市豊玉町
 
   
▲ツシマコメツキモドキの交尾 Tetraphale fryi (Fowler, 1886)  2023.06.02 対馬市豊玉町 
 
▲ツシマコメツキモドキの交尾 2023.06.02 対馬市豊玉町    ▲ツシマコメツキモドキの交尾 2023.06.02 対馬市豊玉町 
 
▲ツシマコメツキモドキの交尾 2023.06.02 対馬市豊玉町    ▲ツシマコメツキモドキの交尾 2023.06.02 対馬市豊玉町 
 
   
 
▲ツシマコメツキモドキの交尾 2023.06.13 対馬市美津島町    ▲ツシマコメツキモドキの交尾 2023.06.13 対馬市美津島町 
     
     

▲ツシマコメツキモドキ 2011.06.08 対馬市豊玉町産







対馬のコメツキモドキ 

 アカアシヒメコメツキモドキ Anadastus ruficeps (Crotch, 1873)
雰囲気のいいカモジグサの茎を丹念に見ていくと,いました! 体長4〜5mm程の小さなコメツキモドキです。
交尾個体もいたのですが残念ながら落っことしてしまいました。初記録は2015年ですが,対馬未記録種です。
▲カモジグサの茎上のアカアシヒメコメツキモドキ Anadastus ruficeps (Crotch, 1873) 2021.05.18 対馬市厳原町
▲カモジグサの茎上のアカアシヒメコメツキモドキ Anadastus ruficeps (Crotch, 1873) 2021.05.22 対馬市厳原町
▲アカアシヒメコメツキモドキ 2021.05.18 対馬市厳原町 ▲アカアシヒメコメツキモドキ 2021.05.22 対馬市厳原町

▲アカアシヒメコメツキモドキ 2021.05.18 対馬市厳原町産


 キムネヒメコメツキモドキ Anadastus atriceps (Crotch, 1873)
▲キムネヒメコメツキモドキ 2009.06.17 厳原町


 ツマグロヒメコメツキモドキ Anadastus praeustus (Crotch, 1873)
▲ツマグロヒメコメツキモドキ 2006.07.03 対馬市上県町  ▲ツマグロヒメコメツキモドキ 2011.09.04
▲ツマグロヒメコメツキモドキ 2017.07.10 上対馬町


 ルイスコメツキモドキ Languriomorpha lewisi (Crotch, 1873)
2016年の5月にオオバイノモトソウから多くのルイスコメツキモドキを採集することができました。 このシダ植物は全島に広く見られ、いくつかの群落から同じようにルイスコメツキモドキが落ちてきました。
このことからルイスコメツキモドキはオオバイノモトソウを寄主植物としている可能性があります。

ただ,このオオバイノモトソウは幼虫が潜行するには茎が細く堅いので寄主植物ではなく,何らかの目的で集まっているのではないかとの指摘もあります。 
▲オオバイノモトソウの葉上のルイスコメツキモドキ Languriomorpha lewisi (Crotch, 1873) 2016.10.18 対馬市厳原町
▲オオバイノモトソウの葉をかじるルイスコメツキモドキ Languriomorpha lewisi (Crotch, 1873) 2016.10.18 対馬市厳原町
▲オオバイノモトソウの葉上のルイスコメツキモドキ Languriomorpha lewisi (Crotch, 1873) 2016.10.18 対馬市厳原町
▲オオバイノモトソウ 2016.10.18 対馬市厳原町 ▲オオバイノモトソウ 2016.10.18 対馬市厳原町
▲オオバイノモトソウの葉上のルイスコメツキモドキ Languriomorpha lewisi (Crotch, 1873) 2016.10.18 対馬市厳原町

▲ルイスコメツキモドキ 2016.05.04 対馬市上県町産 ▲ルイスコメツキモドキ 2019.04.17対馬市厳原町産
▲ルイスコメツキモドキ 2018.04.09 対馬市厳原町産 ▲ルイスコメツキモドキ 2016.05.04 対馬市上県町


 ケシコメツキモドキ Microlanguria jansoni jansoni (Crotch, 1873)
 
▲ケシコメツキモドキ オオバイノモトソウから落ちてきた 2016.10.17 対馬市厳原町産