虫つれづれ 2005.3

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 03.03  待ち人来たれり  トビネシャチホコ


2005.03.03(木) 待ち人来たれり

とうとうというか,やっとこせというかトビネシャチホコが初飛来した。

「やぁやぁ,お久しぶりだねぇ…。」と旧知の友に再会したような感覚だった。



この蛾は,年1回早春の3月頃に姿を現す。

早い年は2月からも見られ,4月初めまで生き残っていることもある。



  初飛来したトビネシャチホコ Nephodonta tsushimensis Sugi, 1980


シャチホコガ科に属し,今のところ1属1種の珍しい蛾である。

翅の付け根付近がトビ色をしているので,トビネの和名が付けられたのだろう。



出会い

この蛾を初めて見たのは1976年(昭和51年)の4月のことだった。

美津島町昼ヶ浦の当時小学4年生だった子どもが,マッチ箱に入れてプレゼントしてくれた。

発生の末期でもあり,かなり擦れた♀で,何科の蛾かも分からなかった。保育社の蛾類図鑑は持っていたが,絵合わせ同定でも該当するような種は見つけることができなかった。



それから4年後の1980年。

対馬の蛾の調査に精力を尽くされた渡辺徳氏採集の個体をもとに,新種のシャチホコガとして記載された。

名前が分からなかったはずである。まだ未発見の蛾だったのである。



  触覚の形状から♂

その後

1980年からの6年間,美津島町芦浦(Yoshiga-ura Mitsushima)では多くの個体が灯火に飛来するのを観察した。

この間,三角紙内で産み落とされた卵を専門家に送った記憶がある。食草は何か,幼虫や蛹はどんな姿をしているのか等を調べてもらうためである。

卵は青緑っぽくくすんだ,やや扁平な半球形だったと記憶している。

しかし,その後専門家から何のリアクションがなかったということはうまくいかなかったのかもしれない。

現在,食草や生活史は少しは判明したのだろうか?

今後は♀の初飛来日と発生の終期をしっかり見ていきたい。


橙黄色の斑紋が大陸亜種と一致